“バイエル薬品ドロンタール錠”を、ナナが二分の一錠、サバトが一錠、吾輩は一と二分の一錠飲まされる。
今回も薬を刺身に入れる等のブルジョアな工夫は一切無い。舌奥に押し込んでの強制投与である。
粗暴な素人の錠剤投与ほど怖いモノはない。喉に詰まる危険があるからだ。
もしもの時は、クチ(Mouse to mouse)でもって吸い出すハメになる。吾輩としては、それを主に実行されるのは極めて回避したい事態なので、速やかに錠剤を飲み下した。
ヤニ臭い中年男の接吻より大粒の錠剤の方がはるかにマシであろう。
ナナとサバトは抵抗するも結局は主には敵わず、投与後には物陰に隠れ、恨めしげに『狭い世界の矮小なる独裁者』を睨んでいた。
しかし、投与後の口直しとして“モンプチスープメニュー”が用意され始めると、その甘美な香りに篭絡され、皆、電光石火で、全面的に、完璧に、主の凶行を忘れて愛敬を振り撒くのだ。
残念だったのは、三等分されたはずの“モンプチスープメニュー”の『具』が吾輩の分だけ少なかった事である。
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