2008年9月23日火曜日

捨て猫

吾輩(わがはい)は猫である。名前はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当(けんとう)がつかぬ。

腹が非常に減り、何でもよいから食物(くいもの)のある所まであるこうと決心をし、迷い込んだのが、やたらと人間の多く行き交う駐車場であった。

此処は隣接する洋館の専用駐車場であり、祝宴でもあるのか?連日千人以上の客人が訪れていた。幸いにも吾輩を追い立てる人間はおらず、タクシードライバーなる職業の人間達は好く遊び相手にもなってくれ、食物も与えてくれた。

捨て猫


時折、子連れの白猫を見かけた。あわよくば吾輩も養ってくれはしないかと期待したが、彼女は自分の子猫を守るだけで精一杯であった。彼女は果敢にも洋館で飼育されているマガモを狩りに侵入していが警備は厚く、毎度この館の庭師に追い出されていた。

吾輩には自身より大きいマガモを狩るのは難しく思えるし、なによりヤツらの数が多過ぎる。多勢に無勢だ。マガモ共に取り囲まれ突き廻されたら敵わぬので、行き交う人間に媚を売り、食物をねだる事に専念した。

媚を売る猫

庭師達も手塩にかけて育てているマガモを吾輩が襲わぬと知り、御手洗団子(みたらしだんご)などを食わせてくれた。

人間には対抗するより、愛想を振り撒いた方が得である。